骨粗しょう症とは
さまざまな原因により、骨がもろくなり、骨折しやすい状態にあるのが骨粗しょう症です。
我が国においては、人口の急速な高齢化に伴って骨粗しょう症患者が年々増加しつつあり、その数は1,300万人と推測されています。(「骨粗鬆症の予防と治療のガイドライン2015年版」より)
治療を受けているのはそのうちの2割以下と、対策が後手に回っている現状があります。
骨粗しょう症を放置するリスク
骨粗しょう症は骨折するまで無症状です。最近では、「いつの間にか骨折」と言われるように、重度の骨粗しょう症では、何も原因なく骨折してしまう場合もあります。
そして多くの方に見逃されているのが、「高齢者の寝たきりリスク」です。それまで元気に活動していた方でも、骨折の治療で横になっているうちに筋力の低下・こわばりが進んだり、関節の可動域が狭くなることがあります。せっかく治療を終えたのに、活動範囲が大きく狭まったり、寝たきりになったりということになりかねません。
若い方と年齢を重ねた方では、骨折に伴うリスクの大きさがまるで違うということを、理解しておく必要があります。
精度の高い検査で適切な治療へ
骨粗しょう症の治療ときくと「カルシウムを摂ればいい」とお考えの方がいらっしゃいます。間違いではありませんが、それだけでは不十分です。
食事療法、運動療法、薬物療法(骨形成を促進する薬/骨吸収を抑える薬)などを、患者様の骨の状態に合わせて組み合わせる必要があります。
そして適切な治療計画をご提案するためには、正確な検査が欠かせません。当クリニックでは、高精度検査「DEXA法」を導入し、そこから得られる「海綿骨構造指標(trabecular bone score:TBS)」により、患者様一人一人にベストな治療を提供しております。
骨粗しょう症の原因
骨を健康に維持するためには、骨の形成、骨の吸収(破壊)のバランスが保たれている必要があります。
骨の吸収量の方が多くなり、骨の形成が追い付かなくなると、骨がもろくなり、いずれ骨粗しょう症を発症します。
形成と吸収のバランスを悪化させる原因としては、以下のようなものが挙げられます。
- 加齢
- 運動をせずに食事に大きな制限をかけるといった極端なダイエット
- 偏食による栄養バランスの乱れ(カルシウム、タンパク質、ビタミンD、ビタミンKの不足)
- ホルモンバランスの乱れ
- 過度の飲酒、喫煙
- 遺伝
女性に多い「ホルモンバランスの乱れ」による骨粗しょう症
骨粗しょう症患者の、約8割が女性です。特に更年期以降は注意が必要です。
閉経を迎えると、エストロゲン(女性ホルモンの一つ)の分泌量が大幅に低下します。エストロゲンには骨の吸収を緩やかにする働きがあるため、その作用が失われていくことで、骨がもろくなります。
女性の場合、60代で2人に1人、70歳以上で10人に7人が骨粗しょう症であると言われています。
できるだけ早く骨粗しょう症の検査を受け、適切な予防・治療を開始しましょう。
当クリニックの骨粗しょう症の治療
当クリニックでは、食事療法、運動療法、薬物療法を中心とした骨粗しょう症の治療に取り組みます。
検査結果から、患者様一人一人に合った治療計画をご提案します。
食事療法
骨粗しょう症の予防・治療では、バランスの良い栄養の摂取が欠かせません、特にカルシウム、たんぱく質、ビタミンD、ビタミンKなどを意識的に取り入れることが大切です。
避けるべき栄養素や食品はありませんが、リン、カフェイン、アルコールの過剰摂取には注意します。リンやカフェインにはカルシウムの排出を促進する働きが、アルコールにはカルシウムの吸収を妨げたり排出を促したりする働きがあります。ただし、いずれも過剰に摂取した場合でのことですので、適量であればそれほど気にする必要はありません。
こんな食品がおすすめです
カルシウム
牛乳、チーズ、ヨーグルト、干しえび、ひじき、わかさぎ、ししゃも、いわし、えんどう豆、大根、小松菜、モロヘイヤ など
たんぱく質
肉類、魚類、卵、乳製品、大豆 など
ビタミンD
カワハギ、鮭、マス、にしん、ししゃも、うなぎ、しらす、きくらげ、マイタケ、卵、アンコウの肝 など
※ビタミンDは、紫外線を浴びることで体内でも合成されます。
ビタミンK
納豆、カブの葉、大根の葉、よもぎ、抹茶、パセリ、しそ、モロヘイヤ、春菊、おかひじき、小松菜、ほうれん草、菜の花、かいわれ大根、にら など
運動療法
骨は適度に負荷がかかると強くなります。特にウォーキング、軽いジョギング、エアロビクスなどの運動が効果的です。普段あまり運動をしない方は、平地でのウォーキングから始めると良いでしょう。
運動は筋肉の維持にも役立ちます。バランス感覚も保たれますので、骨折の原因となる転倒を防止する意味でも有効です。
薬物療法
食事療法、運動療法に加えて行うのが、薬物療法です。
骨の形成を促進する薬や、骨の吸収(破壊)を抑制する薬、ビタミン剤などを使用します。また、痛みがある場合には痛みを取り除く薬を使うこともあります。
当院の骨粗しょう症の診断
骨粗しょう症の治療は、現在の骨の状態をしっかりと把握するところからスタートします。
当クリニックでは、高精度の骨密度測定「DEXA法」を導入しております。その他、エックス線検査、身長測定、血液・尿検査などが行い、骨粗しょう症を診断します。
骨密度測定(DEXA法)
「DXA法」とも表記されます。
二種のエネルギーを持ったエックス線を照射し、高い精度で骨密度を測定します。
現在、骨の量を測定する方法はさまざまありますが、腰椎に対するDEXA法がもっとも信頼性の高い測定法とされています。
海綿骨構造指標(trabecular bone score:TBS)について
DEXA法によって得られる、骨微細構造・骨折のリスクを評価するスコアです。精度の高いデータとして、より綿密な治療計画をご提案することが可能になりました。
エックス線検査
胸椎・腰椎のエックス線画像から、骨の変形、骨の状態を確認します。他の疾患との鑑別にも役立ちます。
身長測定
背が縮んでいないかを確認するために行います。背の縮みが大きければ、それだけ骨粗しょう症が進んでいる(骨折しやすくなっている)可能性が高いと言えます。
血液検査・尿検査
骨の新陳代謝(形成と吸収)のスピードを知るために行います。骨密度の低下しているスピードが速いほど、早急な治療が必要と言えます。
骨粗しょう症の薬
当クリニックの骨粗しょう症の薬物療法では、主に以下の薬を使用します。
ビスフォスフォネート製剤 | 骨の吸収を抑えることで、骨密度を高めます。骨粗しょう症に使用する薬物の中でも効果の高い薬です。 |
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活性型ビタミンD3製剤 | カルシウムの吸収を促進すると同時に、骨形成・骨吸収のバランスを整えます。 |
ビタミンK2製剤 | 骨の形成を促進し、骨粗しょう症の発症・進行と骨折のリスクを低減させます。 |
女性ホルモン製剤(エストロゲン) | エストロゲンの分泌量低下による骨粗しょう症に有効な薬です。更年期前後から現れる女性特有の症状に対して使用されます。 |
SERM(塩酸ラロキシフェン) | 女性ホルモンと同様の作用を持ち、骨の吸収を抑制します。 |
副甲状腺ホルモン(テリパラチド) | 骨の形成を促進する薬です。クリニックでの皮下注射、もしくは自己注射による投与が可能です。短時間で改善が期待できます。 |